内海まさかず|栃木市議会議員・民生委員会内海成和

議員だから・・・

2018.08.31

議員だから・・・

 時折、新聞の片隅ですが、「認知症のお年寄りを市民が警察に連絡。無事保護され、通報者が警察から表彰される。」というような記事が写真入りで載ります。皆さんも読んだことがるのではないでしょうか。
今回はそんな話です。

 09年の春先の午後、車でバイパスを走っていると道端に人が倒れていました。
「止まろうか、直ぐには止まれない。どうしようか。」と思っている間に通り過ぎてしまいました。しかし、無視できないと判断して、Uターン。駆けつけました。

 その人を見た瞬間「あっ、知的障がい児(者)だな」と思いました。どうやら歩き疲れて寝て(休んで)いたようです。手には栃木市のパンフレットを持っています。
「大丈夫、けがはない」と話しかけました。
「足が痛い」との答え。足を見るとパンパンに張って、靴擦れもおこしていました。
「名前は?」
「Uちゃん」
「苗字は?」
「Uちゃん」
うーん、これでは埒が明かないと思い。
「家に住んでいるの?施設にいるの?」と「○○(樹木の名前、施設名)」と答えます。
栃木市に○○という施設はありませんから、私には場所が分かりませんでした。
「帰る方向は分かる?」と聞くと、「あっち」と指をさします。

このころになると、近所の人たちが何事かと出てきました。その人から「この近くに障がい者施設があるから、そこではないか」とアドバイスを頂きました。
私も施設があるなら、そこかなと思い。
「車で送っていこうか」と聞くと、
「うん」との答え。

しかし、指をさしたのは逆の方向。

 どうしようかと迷いましたが、知的障がい者は思っていることがそのまま態度に出る(嘘がつけない)特質があので、とりあえず、本人の意向に添うことにしました。
「こっちで大丈夫?」
「うん」
「まだ、走るの?」
「うん」

しばらく走るとコンビニが見えてきました。
ユウちゃんが話しかけてきました。
「Uちゃん、喉が渇いた。何か飲みたい。」
仕方なく、コンビニにより「好きなジュースを選びな」と言うと、
「Uちゃん、お腹すいた」
「仕方ない。パンも一つだけ買っていいよ。一つだけだよ」
と言ってパンとジュースを買うことになりました。

 Uちゃんが、パンを食べながら「今晩のご飯はなにかな?」と聞いてきます。「うーん、俺は分からないな。お昼ご飯は食べたの?」と聞くと「食べてない」とのこと。
 朝、施設を出て歩きっぱなしのようでした。△△町から栃木駅まで歩いて来て、パンフレットをもらい、引き返している最中で足が痛くなって寝ていたようでした。これが道端に座っていただけなら私は通り過ぎていたでしょう。不思議なものです。

 コンビニの駐車場で、栃木市の職員に電話しました。
 「今、△△にいるのだけども、近くに○○という障がい者施設あるのを知ってます?」
答えは「○○?よく分からないですね。施設は近くにあるとおもいますけど・・・」との事。その時、△△には知り合いがいるのを思い出しました。
 その人に電話すると「○○は、そのままずっと走って左側に入って、少し行った所にあるよ」とのこと。その通り走ると○○がありました。

無事、その施設に到着。
施設に入ると、てんやわんや、職員が総出でUちゃんを捜しているところでした。
帰ろうとすると、職員に「上の者が帰ってくるまで、待っていて欲しい」と引き止められました。 
しばらくすると捜索に出ていた施設長が帰ってきて、Uちゃんの話になりました。

 Uちゃんは過去にも脱走(?)したことがあったようです。Uちゃんは、よく父親と散歩していたから、父親の所に歩いて帰ろうとしたのではないか。何とか栃木駅までは来れたけど、それ以上行けなく引き返したのだろうとのことでした。父親に会いたい、純真な気持ちだったのでしょうか、その気持ちに感動しました。

 そんなこんなで、時間がかかりましたが。「これで帰ることができる」と思ったら、今度は警察がやってきました。捜索願いも出していたようです。
 警察官「ちょっと、お話を聞かせて下さい。」
 「どこで発見されたのですか」
 「あなたの名前は」
 「住所は」
 「連絡先は」
 「お仕事は」
 「何をなさっていたのですか」
と矢継ぎ早に質問してきます。まるで、こちらが悪いことでもしたような感じです。
 私としては、救助をして、方々に電話し施設をつきとめ、送り届けたのだから、ここまで聞かれる必要はないんじゃないか、嫌な感じと思ってしまいました。警察官としては仕事で聞いているのでしょうけど・・・。
 
 後日、知り合いの警察官に、冗談で「私は表彰されないのか」と聞くと、
「一般人ならいざ知らず、議員でしょ」
 と言われてしまいました。

 
そうか議員は特別なのか。あんまり嬉しくない特別だな~。